2007年12月12日水曜日

戦争のはらわた(サム・ペキンパー監督)

 サムペキンパー監督は現在に至るハードボイルド、バイオレンス映画のパラダイムを築いた偉大な人物である。また、アメリカンニューシネマの先駆けでもある。彼の残した作品は今でもなお、十分に鑑賞に堪えうるものばかりだ。
 彼の作品の特徴は、スローモーションや巧みなカット割りによる迫力に富んだアクションシーンだ。本作でもその実力は戦争を題材とする本作でも遺憾なく発揮されている。
 凄まじい勢いで吹き出す血しぶき、燃え上がる戦車、粉々に吹き飛ぶ建造物。荒くれ者たちの殺し合いが、血糊と火薬を使って手際よく描かれていく。
 しかし、「神は細部に宿る」という言葉があるように、真に優れた映画には、さりげないワンシーン、ワンカットにも強いインパクトを感じ取れる。たとえば、喚きたてる兵士を黙らせるために戦友が荒々しい「キス」を食らわせる場面、あるいは「お前は男の方が好きなんだな!!」と上官が部下を怒鳴り上げ無理やり「イエス!」と叫ばせる場面、または捕虜にした女性兵士を襲った男が逆に局部を噛み切られる場面などである。「戦争映画」でありながら、戦うということの「病理」や「苦痛」が、戦闘以外のシーンからもまた存分に伝わってくる。それはペキンパーが持つ「男たちの世界」への繊細な洞察力の成せる業であろう。
 本作は、「男の戦争」と「戦争の男」を描く乾いた、武骨な傑作だ。了

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