2008年1月19日土曜日

トイズ(バリー・レヴィンソン監督1992)85点


 自分はものを粗末に出来ない性格で、だからいまだに幼稚園や小学生時代に親しんだ玩具を大切に保管している。今になってみれば、ただのガラクタにしか見えないミニカーや超合金ロボットでも当時は虜になっていた。
 自分の幼年期には『セイント聖矢』や『ガン消し』、『ビックリマンシール』の大ブームが起きていた。また、その他にも『ネクロスの要塞』というゴム人形のコレクションに自分は夢中だった。合計100体以上集めていた。
 そもそもなぜ子供たちはこれほどにいつでも、おもちゃが大好きなのだろう。それは、自分自身は無力な存在で、大人に支配されているけれど、おもちゃと戯れるときは自分が世界の王様になった気分になれるからだと思う。
また、おもちゃは子供の想像力や独創性をどんなものより刺激してくれることも理由だろう。たとえば自分は、思いのままに様々な形を作れる『レゴ』も大好きだった。粘土遊びも毎日やっていた。
 本作はこのような誰もがかつて過ごした「おもちゃ箱の日々」をまざまざと甦らせてくれる、とても優しくて楽しいファンタジー映画である。『チョコボール』の「おもちゃの缶詰」を初めて開けた時のあの胸の興奮を、自分は再び鮮やかに思い出したのだった。
 草原にたたずむ大きなおもちゃ工場を舞台に、おもちゃと子どもたちを利用して世界制服を企む軍国主義者の将軍と、それに立ち向う御曹司の主人公、という平和と反戦の熱いメッセージが伝わるストーリーとなっている。
この作品は一見ディズニーアニメのようにほのぼのとした雰囲気だが、しかし実際は厳格なまでの様式美が徹頭徹尾貫いていることが特徴だ。
 空の色、建物、壁紙、衣装、小道具、キャラクター、画面に映る存在全てが「おもちゃ箱」のそれなのである。『シザーハンズ』[1]とよく似ている。そのこだわりは異常なほどに感じる。それゆえ、冒頭から終盤まで作品の世界観の「調律」が全くずれていない。完璧な「ネバーランド」がそこにはあった。
だからこそ、観る者はぐいぐい物語の中に引き込まれていく。かつての無邪気な童心が長く深い眠りから目を覚まし、「おとぎの国」へと大人たちを心地良く誘う。了
[1] ティム・バートン監督『シザーハンズ』1990

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