2008年1月13日日曜日

U・ボート(ウォルフガング・ペーターゼン監督1981)80点


  映画界には様々なジンクスがある。いわく「パート2は駄作になる」、「スティーブン・キング原作の作品は成功、失敗がはっきり分かれる」、「法廷映画はアメリカでは手堅くヒットする」等等。
 その中の一つに「潜水艦モノは外れない」というものがある。『レッドオクトーバーを追え』[1]、『クリムゾンダイド』[2]や本作等、傑作ばかりが生まれるようだ。先日日本でも人間魚雷「回天」をテーマとした『出口のない海』[3]が公開され、高い評価を受けたところだ。
 潜水艦作品において、物語を貫くのは「深海の中を走る密室の緊迫感」である。本作では特に、視覚ではなく我々の聴覚に極限状況を体験させたのだった。「耐圧深度ギリギリまで潜った際に艦体がきしむ音」、「敵艦を探知した時のソナーの音」、「魚雷が海中を進む音」等、暗い海の底で展開される出来事を様々なサウンドによって見事に描写している。
 また、敵艦から攻撃を受けた際の船内の混乱と恐怖も、狭い艦内を引きつった表情で駆け回る、船員達の緊張感溢れる様子から余すところ無くこちらに伝わってきた。
 「本当は一刻も早く誰もが地上に戻りたいのだ」、このように自分は強く察した。大海原をたった一隻で、死と隣り合わせで進んでいくことの耐え難い心細さ、孤独、悲愴…
 しかし、主人公達の潜水艦はそうした感情を抱えながらも勇猛に敵の駆逐艦を次々と撃沈させていく。その姿はさながら「海のスナイパー」であった。
終盤、任務を果たして無事に戦艦は母港に戻ることができた。だが、一同がほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、突如空爆に襲われ、艦長は負傷し、戦艦は破壊されて海の藻くずと消えていった。
「海軍が陸で死ぬ」、皮肉な結末は「戦争は死に場所など選ばせてくれない」という無情な真実を、否応にも我々の眼前に見せつけたのだった。了
[1]ジョン・マクティアナン監督 『レッド・オクトーバーを追え!』1990
[2] トニー・スコット監督『クリムゾン・タイド』1995
[3] 佐々部清監督『出口のない海』2006

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