2008年1月1日火曜日

スクリーマーズ(クリスチャン・デュゲイ監督1996)80点


 凡作ではないが傑作でもない。これが素直な感想である。
 原作が名作『ブレードランナー』[1]のP・K・デリックと聞いて多少期待をしたのだが、鑑賞後やや不満が残った。
『ブレードランナー』では人間そっくりの「レプリンカント」と呼ばれる人造人間が登場し、我々に「人の自己同一性」という哲学的で深遠な問いを投げ掛けてきた。本作においても、人間と見分けがつかない「スクリーマーズ」という殺人機械が現れる。
「誰が味方で誰が敵か見分けがつかない」という恐怖は、『遊星からの物体X』[2]とも重なるが、本作の方が公開時期は後である。
1人また1人と「本物の人間」の側が「そっくりな機械」たちに殺されていくくだりはホラー映画にも勝る恐怖と緊迫感を覚えさせる。スリリングで緊張を保った演出は見事であった。
しかし、やはりわずか120分弱の映画ではSF小説の世界観を描ききるのはかなり難儀なのだろう、どうしてもよく理解出来なかったり、展開に無理を感じた箇所がいくつもあった。また、舞台が荒涼とした砂漠の広がる惑星であるためか、画面がどこかチープに見えてしまう。主人公達が使用する銃もレーザーではなく銃弾を発射するし、建造物のデザインもなにか古臭かった。それゆえ「本当に未来の話なのか」と疑問に思ってしまう。
したがって自分としてはもっともっとビジュアル面で細部にまで凝って欲しかった。そうした「こだわり」がこの作品にはなかったように見えた。脚本においても、終盤の「どんでん返し」は分かる人にはすぐ見抜ける展開だった。そしてヒロインが残す最期の言葉も『ブレードランナー』とほとんど同じであり、「二番煎じ」に感じられた。
けれどもやはり彼女のセリフは胸を打つ切なさがあった。この種のテーマは我が国ではアニメ『妖怪人間』[3]が著名だが、「限りなく人間に近いのだけれども人間ではない」という人造人間の悲しき運命は、時代や世代を超えて常に私たちに「貴方は誰ですか」という根源的な問いを尋ねて止まない。
「私が私であること」の自明性にもし疑問を覚え始めたなら、実は貴方はもしかして高性能の人型ロボットなのかもしれない。了
[1] リドリー・スコット監督『ブレードランナー』1982
[2] ジョン・カーペンター監督『遊星からの物体X』1982
[3] アサツー ディ・ケイ原作『妖怪人間』1968~1969フジテレビ系列放送 

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