2008年1月4日金曜日

ファングルフ(アンソニー・ウォラー監督1997)75点


 本作はカルト的人気を誇る『狼男アメリカン』の続編だ。この監督はデビュー作『ミュート・ウィットネス』[1]が出色の出来で、一躍注目されたクリエイターである。自分もこの作品を見たが非常に良く練られた脚本と凝った演出で、本当に面白かった。
 そのため、彼の新作を待望していたのだが、ふたを開けてみると残念だが「駄作」の評価に尽きる。
 そもそもなぜ今になって「狼人間」を題材にしたのか疑問だ。処女作で見せた彼の才気をさらに発揮できるテーマは他にいくらでもあったに違いない。人を喰って生きる狼女と彼女を愛してしまった男。そして狼への変身を食い止める血清の存在。このシナリオはバンパイアものとそっくりであり、何の新鮮味もない。
 映像に関しても、狼への変身とその後の姿を表現するCGもどこか不自然で迫力がない。また、鏡を見直したらそこに幽霊がいる、などという画はもはや余りにベタ過ぎる。
 他にも幽霊が主人公の手助けをするという構図も『ペットセメタリー』[2]の模倣にしか見えなかった。クライマックスも、盛り上げるつもりがただのテンポが悪いドタバタ劇に終始していた。唯一の救いを挙げるとすれば、ハッピーエンドで物語が終わったことである。
 それにしても本当になぜあの監督がこんな作品を撮ってしまったのか鑑賞後不思議でならなかった。残念ながらこの後も彼は作品に恵まれず、処女作では「ヒッチコックの再来」とさえ賞賛の声が上がっていたのに現在では既に「過去の人」になりつつある。映画の世界もやはりショービス界の一つなのでかなり水物なのだろう。「時の運」や「人の縁」という不確実な要素に大きく左右され、たとえ才能があろうと、花開く前に散ってしまう者も数え切れないほどいる。だが、パリからハリウッドに進出したものの『エイリアン4』を造って酷評されたジャン=ピエール・ジュネ監督が再びフランスで『アメリ』を撮って見事に復活したようにウォラー監督にも、あきらめずにもう一度華々しい活躍をしてくれることを自分は期待したい。そう言いたくなるほどデビュー作は傑作だったのだから。了
[1] アンソニー・ウォラー監督『ミュート・ウィットネス』1995
[2]メアリー・ランバート監督『ペットセメタリー』1989

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