2008年2月7日木曜日

シックス・センス(M・ナイト・シャマラン監督1999)


 本編が始まる前に「この映画にはある“秘密”が隠されています。決して他人に話さないで下さい」というテロップが出てきた。それで、「一体どんな結末が待つのだろう」と期待に胸を膨らませながら観ていたのだがしかし、最期のシーンはどんでん返しに対する驚きよりも、意外なことに、人との惜別による「哀しさ」いう感情を、自分の心に強く呼び起こすのであった。
 「霊が見える」と訴え、周囲に心を閉ざした少年が、その超能力によって人々を救済していく様子がこの物語の中心となっている。
 やり残したことを山積みにしたまま死んでしまった者たちが、この世に未練を残さないで天国に行けるように彼らの手助けをしてあげるのが少年の役割なのだ。しかし、その過酷な使命ゆえ少年自身は全く幸せそうに見えない。そこへ、そんな彼を放っておけず必死になって助けようとする児童精神科医の男が現れる。やがて二人は信頼し合い、実の親子のように寄り添い歩くようになっていくのだった。そして少年の“症状”は改善されて、普通の子どもに戻っていったように見えた。彼は少年を救うことに成功したと思い、ほっと胸を撫で下ろした。
 けれども彼にはもう一つどうしても解決できない、気がかりなことがあった。なぜだか妻にいつも自分の存在を無視されているのだ。食卓には料理が毎日一人前しか並ばないし、結婚指輪も見当たらない。しかも妻は他の男と親密になっていた。そんなある日、ふとあの少年の言葉が頭をよぎった。
 「僕には死者が見えるんだ」
 ラストで、二人の関係の真実が明かされる。「救う」側と「救われる」側が実は180度違っていたことに我々は気づかされるのだ。
 少年は男の霊もまた救済していた。本作はしたがって、既存の恐怖ものではなく「ヒューマン・ホラー」とでも名づけられる斬新なジャンルに属するだろう。今日もまた少年は街を一人で歩いて小さな天使のように、さ迷える魂たちを救い続けている。了

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