2008年2月1日金曜日

バトル・ロワイアル(深作欣ニ監督2000)


 「子ども」と「学校」という、本来最もバイオレンスとは無縁な素材を用いて大流血のアクションに仕上げたのが本作である。原作の小説[1]の大ヒットを受けての映画化だ。
 「同じクラスの中学生同士が生き残りをかけて、無人島で殺し合う」という余りに反社会的でセンセーショナルな内容ゆえ、公開にあたっては国会で取り上げられたり、映倫によってR15指定にされるなど大きな物議をかもしたことは記憶に新しい。だがこうした騒動が結果的に興業面に多大な貢献を果たしたのだった。
 子ども達が殺戮を繰り広げる話など、ハリウッドでは絶対に制作も上映もできないだろう。しばしば欧米の人々は、「日本はポルノや暴力表現が野放しで青少年に有害だ」と指摘する。とはいえ、それが犯罪に結びつき社会を脅かしている、という客観的なデータはいまだ存在しない。したがって、我が国特有の「表現に対する寛容さ」は文化の発展の原動力として肯定できるだろう。古くは江戸時代の春画、現在ならばレディース・コミック、官能小説、そして数多あるアダルト雑誌。また、コンビニに並ぶたくさんの漫画はヤクザ、格闘技、歴史、SF、ありとあらゆるジャンルを貪欲に題材としている。こうした、エログロ・ナンセンスの広範な土壌が日本の豊かなサブカルチャーを支えているのだ。
 本作の原作も後に『ヤングチャンピオン』誌にて漫画化された。[2]映画よりも一段とオリジナルへ忠実に描かれているため、極めてグロテスクで残虐なものになっている。それが新たなファンの開拓にもつながったという。
 本作自体の評価に移れば、熟練の深作欣二監督ならではの安定した演出の手堅いアクション・エンターテイメントに仕上がっていた。少年少女たちの流血を補って余りある面白さだ。
 この作品は、改めて「表現の自由とは何か」、という根源的な問いを私たちの社会に正面から突きつけた。自主規制、モザイク、カット、修正、年齢制限、公開延期etc、過激な映画に対して、わが国では常に場当たり的な対処がなされ続けてきた。だが、このままでよいのだろうか。文化を殺すのでなく育てるためには、今こそ何が必要なのだろうか。了
[1] 高見高春『バトル・ロワイアル』大田出版1999
[2] 田口雅之『バトル・ロワイアル』秋田書店2000~2005

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